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 幕末、各地は次のように開港し、それに伴い外国人がさまざまの洋風建造物を建設しました。その多くは、災害や戦災、都市開発により失われていますが、風雪に耐えて残った歴史的建造物は、都市観光資源として、修復保存されています。現在の人口は、【全国の市区町村】人口ランキング・面積ランキング・人口密度ランキングのデータによりました。
現在の人口 開港日
横浜 3,775,352 安政6.6.2(1859.7.1)
長崎 403,950
函館 247,293
神戸 1,517,073 慶応3.12.7(1868.1.1)
 外国人の主な居住区域は次の表の赤線で囲った地域です(外国人居留地の建設過程と計画手法に関する研究)。横浜と長崎の居留地は、幕府が本腰を入れて整備し、特に横浜は突出した規模を誇っています。一方、函館では出島方式の外国人居留地が計画されたものの、埋立地が狭すぎて結局失敗に終わり、外国人居館は市中に混在することとなり、外国公館や教会などは、大工町の上の一角、現在の元町高台に集まりました(函館市元町末広町伝統的建造物群保存地区の保存に関する計画)。また、神戸では、居留地の整備が開港に間に合わず、海岸から山裾までの広範な区域に雑居が認められました。

 幕末の開港地で、洋風の歴史的建造物群が保存公開されているのは次の区域です。
横浜 横浜山手西洋館
長崎 南山手(グラバー園、大浦天主堂)東山手(オランダ坂) 
函館 元町周辺(旧函館区公会堂、函館ハリストス正教会、金森倉庫群)
神戸 北野異人館街 
 1897年の横浜は次のようになっています(横浜居留地Q&A)。

横浜山手西洋館とは||山手西洋館公式サイト 山手234番館以外の6館は挙式・披露宴可能(西洋館ウエディング
●《関東大震災》を調べる。
外交官の家 1910年、外交官内田定槌氏の邸宅、1997年、東京渋谷から移築復原 木造2階建て
ブラフ18番館 大正末期オーストラリアの貿易商の住宅、1991年移築復原 木造2階建て
ベーリック・ホール 1930年、イギリス人貿易商の邸宅、2001年復原・改修 木造2階建て
エリスマン邸 1926年、生糸貿易商の私邸、1982年解体、1990年再現 木造2階建て
山手234番館 1927年頃 外国人向けの共同住宅、1997年から保全改修 木造2階建て
横浜市イギリス館 1937年英国領事公邸、1969年に横浜市が取得、2002年から一般公開 鉄筋2階建て
山手111番館 1926年アメリカ人の住宅、1996年に保存、改修、1999年から一般公開 木造2階建て

長崎居留地と国際航路
長崎旧居留地の形成と変遷過程について
長崎の原爆被害における基礎知識 
大浦天主堂の歴史

函館市元町末広町伝統的建造物群保存地区の保存に関する計画
伝統的建造物群保存地区の概要と許可申請について
函館の街並みの「華」 、和洋折衷住宅の魅力 
古地図・絵図で見る、函館の歴史
 このころ、北野町の異人館が女性向け雑誌で取り上げられるようになり、1977年にNHK連続テレビ小説「風見鶏」が放送されたことから、異国情緒あふれる港町としての神戸が注目されるようになります。北野異人館街、南京町、旧居留地といった都市観光エリア(「神戸南京町」の形成と神戸華僑の関わり方に関する研究)は、このようなイメージ戦略に沿って開発されたものといえそうです。




家具調度品をそのままに公開
 1976年発行のan・anでは、神戸の異人館が取り上げられています(「神戸・異国情緒(Exoticism in KOBE)」雑誌『an・an』(平凡出版社、現・マガジンハウス社)7巻19号(通巻No.155)、1976年(昭和51)9月20日)。

 取り上げられているのは、次の6館です。
旧ハンター館  国指定重要文化財 1963年、王子動物園内に移築 
中華同文寮(旧トーマス邸 国指定重要文化財 市が風見鶏の館として公開 
小林秀雄邸  国指定重要文化財 市が萌黄の館として公開 
シュエケ邸  市指定伝統的建造物  
門兆鴻邸(旧ディスレフセン邸) 市指定伝統的建造物  非公開、シュエケ邸の東隣り 
華僑総会(旧ゲンセン邸) 伝統的建造物 中華民國神戸留日華僑總會 
 旧ハンター館は、an・anの取材がなされたときは、すでに王子動物園内に移築されていました。「現存する神戸の異人館の中では最大の規模のものの1つ」で、不定期に内部が公開されています。
 旧トーマス邸は、取材された当時、神戸中華同文学校の学生寮に使われていました。1977年に放送されたNHK連続テレビ小説「風見鶏」では、洋館の風見鶏がタイトルバックに使われていました(昭和52年の朝ドラ「風見鶏」あと1本!)。

 この洋館は旧トーマス邸を模しているようですが、実物の風見鶏(旧トーマス住宅 風見鶏の館)とは形が違っています。

 1978年、国の重要文化財に指定された後、神戸市が買い取りました。旧トーマス邸は、連続テレビ小説「風見鶏」とは直接の関係はありませんが、市では「風見鶏の館」として公開しています。
 小林秀雄邸は、1976年発行のan・anでは、「白く美しい洋館」と紹介されています(「神戸・異国情緒(Exoticism in KOBE)」雑誌『an・an』(平凡出版社、現・マガジンハウス社)7巻19号(通巻No.155)、1976年(昭和51)9月20日)。小林氏は、この翌年、亡くなっています。

 1978年、北野界隈が観光地化する中で、夫人は「当時つかっていた家具調度品をそのままにして、自らは借家にうつり一般に公開することに踏み切られました」(好きです神戸萌黄の館(旧小林家住宅)「異人館のある町並み北野・山本」31ページ)。小林秀雄邸は、建築当初は淡緑色だったことが判明し、萌黄色に復元され、現在は萌黄の館として公開されています。

伝統的建造物群保存地区に指定
 第二次世界大戦中の米軍の空襲により、神戸市の市街地の大半が焼失しますが、山本通から北側の山際に至る細長い北野町1丁目から4丁目に至るベルト状の一帯が、かろうじて戦災を免れ、1960年頃までは200棟近い異人館が点在していました。しかし、高度成長期以降、次第にビルやマンションへの建て替えが進みました(北野町・山本通 異人館街の歴史)。
 1975年の文化財保護法の改正によって伝統的建造物群保存地区の制度が発足し、全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存が図られるようになりました(伝統的建造物群保存地区 | 文化庁)。神戸市北野町山本通は1980年に伝統的建造物群保存地区に指定され、町並みの保存が図られています。
 保存地区のあゆみは、次のようになっています(神戸市北野町山本通(兵庫県))。

 旧ハンター住宅は、前述のように王子動物園内に移築し保存されていますし、旧ハッサム住宅は相楽園内に移築し保存されています(国指定重要文化財「旧ハッサム住宅」)。これらの建物は、現地での保存を希望したものの、所有者の同意が得られなかったため、移築し保存することになったそうです(「異人館のある町並み北野・山本」27ページ)。
 この地域は、神戸市都市景観条例に基づく都市景観形成地域としても指定されていましたが、2006年景観法に基づく景観計画区域に移行しています(北野町山本通都市景観形成地域)。
 伝統的建造物群保存地区と景観計画区域の関係は次のようになっています(北野町山本通(景観計画区域・伝統的建造物群保存地区)パンフレット )。

 黒い実線で囲まれた景観計画区域で、破線で囲まれた伝統的建造物群保存地区よりも範囲が広いです。伝統的建造物群保存地区における建築物の新築、増築などには許可が要りますが、景観計画区域では届出だけで構いません。つまり、伝統的建造物群保存地区の方が、景観計画区域よりも規制が厳しいです。

多くの伝統的建造物は非公開
 両地域の個々の建造物名は次のとおりです(KOBEミュージアムエリアマップ北野 観光ガイドマップ)。

 それぞれの入館料は次のようになっています( 異人館料金 | 北野異人館ネット)。公開異人館は、景観計画区域(伝統的建造物群保存地区外)にある洋館で公開している建物です。テーマ館は、異人館跡地に新しく建てられた展示施設です。

 赤線で囲んだのが市が管理する公開建物です。このほかにも、旧ハンター住宅と旧ハッサム住宅も市が管理しており、合わせて5館となります。重要文化財に指定されている4館は入場料が必要ですが、65歳以上の神戸市民は無料です。
 青線で囲んだ8館は、異人館うろこグループが運営しています。北の4館が公開異人館で、南の4館が伝統的建造物です。

 紫線で囲んだ3館は、バロンズ・スクエアが運営しています。香りの家オランダ館は、北野異人館ネットでは公開異人館となっていますが、伝統的建造物群保存地区内に建っていて、北野観光ガイドマップでは伝統的建造物となっています。
 神戸北野美術館は株式会社が運営する美術館、プラトン装飾美術館は個人が運営する美術館・カフェ、東天閣グラシアニ邸北野物語館(スターバックス神戸北野異人館店)は、中華料理店、フランス料理店、喫茶店です。
 これら以外の多くの伝統的建造物は非公開です。

「同法において、自主条例では限界のあった強制力を伴う法的規制の枠組みが設けられ、併せて、自治体の独自性が発揮できるよう、自治体の条例で景観に関する規制内容を詳細に定めること等ができる法的仕組みが導入されたといえる。」(景観条例

景観法(2004年6月制定)に基づく景観計画区域 北野町・山本通  税関線沿道  旧居留地  神戸駅・大倉山  須磨・舞子海岸  岡本駅南  南京町
神戸市都市景観条例(1978年10月制定)に基づく都市景観形成地域 ハーバーランド  波止場町・メリケンパーク  新港突堤西  震災復興記念公園周辺  HAT神戸  ポートアイランド西   兵庫運河周辺 
横浜中華街と神戸南京町
がことから
 観光対象化される都市の近代文化遺産--神戸の北野異人館を事例として
 神戸のイメージ調査結果について





北野町・山本通 異人館街の歴史
北野町山本通(景観計画区域・伝統的建造物群保存地区)パンフレット
重要伝統的建造物群保存地区一覧神戸市北野町山本通(兵庫県)  
 観光と地域振興の観点からみた横浜中華街の変容まちづくり事業による景観形成に着目して
神戸『北野町山本通』地区における歴史的町並み保存と観光まちづくり政策の考察
神戸北野異人館街公式サイト 
植民地的遺産としての神戸外国人居留地