2つの須磨 /6つの団地 /ラドバーン /近隣住区
★ニュータウン / 6つの団地  sitemap

 須磨ニュータウンは、開発時期、事業主体、規模などがそれぞれ異なる6つの団地で構成されています(須磨ニュータウンの紹介SUMA NEW TOWN GUIDE MAP)。 


 それぞれの団地の具体的なデータは次のとおりです(大海一雄「須磨ニュータウン物語」10ページ)。いずれの団地も、戸建て住宅、タウンハウス、中層集合住宅、高層集合住宅のエリアからなっていますが、構成比率はそれぞれ異なります。

 1972年時点での土地利用計画図は次のようになっています(大海一雄「須磨ニュータウン物語」10ページ)。白い部分が低層住宅区域、灰色の部分が中高層住宅区域です。

 各団地の賃貸住宅の数は次のようになっています(大海一雄「須磨ニュータウン物語」117ページ)。落合団地は公団が事業主体となっているので、URの賃貸が多いですが、市営住宅も多いです。名谷団地と横尾団地は神戸市が事業主体となっているので、市営住宅が多いです。白川団地は県営住宅が多いです。

 それぞれの団地の黄昏度は次のようになっています(神戸市におけるニュータウンの高齢化と地域コミュニティの現状)。古い団地ほど人口減少率と高齢化率は大きくなっています。しかし、名谷団地や横尾団地は、入居時期や人口ピーク年が比較的新しいにもかかわらず、著しく黄昏れています。

 各団地の1戸当たりの人数、賃貸住宅の割合、開発手法、人口減少率、高齢化率を比較すると次のようになります。このデータを見る限りは、区画整理事業で開発が行われ、賃貸住宅の比率が大きい方が、人口減少や高齢化は抑えられているようにも思われます。
人数 賃貸 開発手法 減少 高齢
北須磨 2.87 0% 1団地 26% 44%
白川台 4.00 55% 区画整理 19% 27%
高倉台 2.48 12% 1団地 32% 35%
名谷 2.19 25% 新住 28% 29%
落合 2.87 57% 区画整理 13% 21%
横尾 2.66 35% 新住 25% 25%
 公的な大規模住宅地開発の手法としては、主に次の4つがあります。
土地区画整理 換地
公的一般宅地開発 土地買収
一団地の住宅施設 土地買収
新住宅市街地開発 土地買収、収容可
 新住宅市街地開発事業(新住)は、ニュータウン特別法ともいうべき新住宅市街地開発事業法(1963年)に基づき、主に市町村、都道府県、公社が事業主体となって行う、大規模宅地開発です。適用第1号は千里ニュータウンで、多摩ニュータウン、泉北ニュータウンなど計画人口10万人以上の大規模宅地はこの手法で開発されています。事業主体が土地を全面買収し(地主が売却に応じなければ、強制的に売買契約を成立させ、土地を収容することもできます)、近隣住区論・ラドバーン方式によるマスタープランにしたがって、戸建て宅地エリア、集合住宅エリア、地区センター、公園、緑地を計画的に配置します。戸建て宅地は公募により販売され、5年以内の住宅建設、10年以内の転売禁止義務が課せられます。
 土地区画整理事業では、土地所有者が平等に、道路や公園の用地を提供し、事業資金も所有者が提供した土地を売却することによって捻出します。公共施設を整備するために必要な費用は、国や地方公共団体から補助を受けることができます(土地区画整理事業の仕組み - 埼玉県)。
 それぞれの開発手法の比率は次のようになっています(日本建築学会計画系論文集第73巻 第623号,131-136,2008年1月)。新住宅市街地開発事業は、近畿圏が多いですが、特に神戸市は8件と突出しています。地方圏では、北海道が9件と目立っています。新住事業では、より計画的な街づくりができますが、全面買収が難しければ、区画整理事業方式となるようです。多摩ニュータウンでは、新住と区画整理を併用しています。

 一団地の住宅施設とは、「都市計画法第11条に規定されている都市施設で、一団地における50戸以上の集団住宅及びこれらに附帯する通路その他の施設をいい」「区域内では、都市計画で定められた事項以外のものはつくることができないことになっています」( 「一団地の住宅施設」と「地区計画」について - 町田市)。高度成長期に開発されたものが多く、少子化により学校の統廃合が進んでも、学校跡地の利用が困難であるなどの問題が生じたため、地区計画に移行する動きがあります。 

 なお、一団地の住宅施設は東京に集中しているようです(一団地の住宅施設に関する研究)。

 前述のように、白川台団地と落合団地は、人口減少や高齢化は抑えられています。
 ただし、少し気になることがあります。白川台団地の1戸当たりの人数が4人となっていることです。これは、2011年の人口10,095を、戸数2,500で割って算出した数値です。しかし、白川台団地の計画人口は10,000ですから、それより増えているのも少し不自然です。
 そこで、グーグルマップで調べてみると、白川台5丁目付近に、大規模マンションが集中しています。1980年以降1990年前後にかけて建設されたようです。大規模マンション1棟で160戸程度の戸数がありますから、当初の計画より戸数が相当数増えたことになります。また、子育て世代が新たに入居することにより、人口減少や高齢化は抑えられることになります。したがって、従来の居住エリアにに関しては、黄昏度は他の団地とさほどの違いはないと思われます。

 須磨ニュータウンの6つの団地の周辺にも、民間が開発した団地が広がっています。東白川台、若草町、緑が丘、清水台、道正台、多井畑東町、多井畑南町などで、これらの団地を含めて、著者はグレーター須磨ニュータウンと呼んでいます(大海一雄「須磨ニュータウン物語」105ページ)。昭和の終わりに入居が始まった若草町や緑が丘は、高齢化率は30%を超えていますが、比較的新しい清水台や道正台は、高齢化率10%以下です。白川台5丁目付近の大規模マンション群も実質的には、周辺に拡大した団地といえそうです。