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 ラドバーン方式とは、1928年に米国ニュージャージー州ラドバーンのニュータウン開発で採用された計画手法で、歩行者と自動車の徹底した分離を狙いとしています(コトバンク)。
 次の図(一級建築士の情報発信室 999)のように住宅前の道路は袋小路となっていて、通過車両は排除されます。一方、車道(グレーの部分)とは別に歩行者専用道路(グリーンの部分)が各住宅と、学校や公園とを結んでいます。歩行者専用道路は、地下道や歩道橋で車道と立体交差しているので、通学児童の安全が守られますし、信号待ちなしで散歩やジョギングを楽しめます。

 小学校区を一つのコミュニティとした近隣住区が形成され、その区域内に商業店舗、コミュニティセンター、公園などが配置され、基礎的な居住ニーズを満たすことができるように設計されています(不動産用語集|三井住友トラスト不動産)。
 このような近隣住区論・ラドバーン方式によって建設されたのが千里ニュータウンです。次のように、12の小学校区に、近隣センターや公園などが配置されています(千里ニュータウン情報館)。

 北須磨ニュータウンの6つの団地でも、ラドバーン方式が採用されています。
 例えば、落合団地では、中央に赤道(あかみち)という歩行者専用道路が通っていて、各住宅を結んでいます。周囲に駐車帯が配置され、入り口にはチェーンゲートがあって、関係車両以外の侵入を阻んでいます。赤道は歩道ですから、自動車はもちろん、バイクや自動二輪も通行禁止となっています(自転車は通行可)。
 各ブロックを結ぶ赤道は、陸橋となっています。ラドバーン方式では、歩道は、地下道や歩道橋で車道と立体交差するのが一般的ですが、アップダウンができるので、車いすや乳母車には不便です。その点、落合団地では、住宅は高台にあり、車道は谷底を通っているので、赤道を陸橋で結べば、アップダウンなしで、車道と立体交差できます。

 落合団地の端から端まで赤道が続いているので、1.7キロを車を気にせず信号なしで歩いて行けます。時速5キロで歩いたとして、21分です。赤道は名谷団地ともつながっているので、好みの長さのジョギングコースを設定できます。赤道は、名谷駅や須磨パティオにもつながっています。

 自転車なら7分です。上りが続くので、電動アシストでないと少しきついです。

 自動車では、迂回しなければならいので、5分かかります。自転車とあまり変わりません。

 落合団地の中でもラドバーン方式が採用されているのは、UR賃貸住宅や分譲集合住宅のエリアに限られます。たとえば、UR賃貸住宅の南側の落合農住団地や戸建て住宅地区では、車道と歩道は分離されていません。落合団地は区画整理方式で開発されたので、規制は比較的緩やかなようです。戸建て住宅地区の青線で囲んだエリアには、コンビニ、パン屋、医院、宗教施設が並んでいます。落合農住団地のA、B、C棟(赤線で囲んだ部分)は解体され更地になっています。宅地や商業地として売却するようです(小説落合団地 3 お隣の「落合農住団地」A・B・C棟解体始まる - 団地小説短編集を歩く)。このエリアは、さらに「普通の街」になりそうです。

 そもそも、戸建て住宅地区で歩行者と自動車を完全に分離しようとすると、かなり広い敷地が必要となってしまいます。西神ニュータウンでは、戸建て住宅が多いこともあってか、ラドバーン方式は完全に放棄されています。

 泉北ニュータウンは、山の尾根づたいを緑道として活かして、駅へのアプローチを緑道という仕組みでつないでいます( 日本一の緑道システム?はじめにC)。
 堺市は、次のような3種類の緑道ウォーキングMapを作成しています。
 緑道ウォーキング泉ケ丘Map 

 緑道ウォーキング栂・美木多Map

 緑道ウォーキング光明池Map

 泉北高速鉄道は、「泉ヶ丘緑道」「栂緑道」「光明池緑道」をひとつなぎにして、フルマラソンの距離に相当する、ほぼ42.195kmのウォーキングコースを提案しています( ほぼ42.195km 泉北緑道ウォーキングマップ)。

 しかし、生活道路としての歩道と車道を分離するというラドバーン方式の思想が十分に実現されているかという点では不十分に思えます。たとえば、茶山台団地から泉ヶ丘駅に抜ける歩道(茶色の線で示した部分)は、迂回している上に、いったん歩道橋を上って下り、再び坂道を上らなければなりません。これなら、車道沿いを歩いて、信号を渡った方が便利です。なお、この地図は北が右になっています。

 また、バスを使ったとしても、バス停までは距離があるので(乗換・時刻表検索|南海バス)、待ち時間を合わせると歩くのと時間はあまり変わりません。